増える熱中症と冷房の弊害

高気密高断熱化が拍車?

厚生労働省調べによる熱中症死亡者数は2001年ごろから増え始めており、それを折れ線グラフにしてみると、熱中症救急搬送数の折れ線グラフとほぼ合致します。

しかし、熱帯夜日数や猛暑日日数の折れ線グラフとは合致しません。つまり、熱帯夜や猛暑日の日数に大きな変化はないのに、熱中症死亡者や熱中症救急搬送数が大きく増えてきているのです。

その背景には、1999年に住宅の次世代省エネ基準が設けられ、高気密高断熱住宅が普及したことが関連していると考えられないでしょうか。

なぜならば、熱中症で救急搬送された方々のうち、年齢関係なく全体で見た場合で約40%、5歳以下で約46%、65歳以上では約61%が住宅等居住場所となっているからです。

冷房需要の増大

当然、温暖化に伴って冷房の需要は高まり、住まいはもちろん、学校などの教育機関、事務所や工場などの労働環境においても、冷房の普及が進んでいます。

現在では、住居の冷房普及率は90%を超え、二人以上の世帯での一世帯当たりのエアコン保有台数は3台を超えるという状況です。

また、文科省の調査によると、小中学校の普通教室での冷房普及率も高く、東京都では99.9%まで達しているのです。

更に、移動中の交通機関やマイカーの中でも冷房が使われており、一日中冷房の効いた空間で過ごすといっても過言ではないような状況になってきているのが実情でしょう

冷房需要の拡大

冷房の弊害

その結果、冷房の弊害が明らかになってきました。そして、これらの弊害は今後、大きな社会問題になっていくと思われます。

それはいったいどのようなことなのでしょうか。

乳幼児

汗をかくための汗腺である能動汗腺が発達するのは生まれてから約3年間だけです。そして、3歳以降は一生涯能動汗腺が増えることはないのです。つまり、汗をかけるか否かは、3歳までに決まってしまい、その体質は一生涯のものとなってしまうのです。

ところが、能動汗腺は冷房の効いた空間で育つと発達しにくいのです。だから、生まれてから3歳までの間、暑い季節に冷房の効いた空間を中心に過ごすと、汗をかけない体質へと育ってしまう可能性が高くなるのです。

その結果、どうなってしまうのか。汗をかけないあるいはかきにくい体質の人は「夏バテしやすい」「熱中症になりやすい」「怖い低体温症になりやすい」といった症状になりやすいのです。

子供たち

令和元年5月23日午前11時半ごろ、新潟県長岡市の黒条小学校で運動会の練習中に、25人前後の児童が熱中症とみられる症状を訴え、病院に搬送されました。

新潟地方気象台によりますと、同日午前11時の長岡市内の気温は、24℃だったとのことです。

この時期、体がまだ暑さに慣れていないということが大きな要因のひとつであると考えられます。

しかし、隠れたもうひとつの大きな要因として、子供たちが乳幼児に能動汗腺の発達が不十分で、熱中症になりやすい体質化が進んでいるということが考えられるのではないでしょうか。

若者

汗をかけない、あるいはかきにくい体質となってしまった若者に対して、専門家は暑い時期の運動には注意が必要であり、場合によっては別メニューが望ましいとまで訴えているのです。

最近では、高校生などの若者が部活などの運動中に熱中症で倒れ、亡くなるという痛ましい事故を見聞きするようになってきましたが、背景にはこういったことが影響しているのではないでしょうか。

そして、人手不足で悩んでいる業種の多くは、汗をかくことを伴う労働です。もし汗をかけない、かきにくい体質の若者が、そういった業種、職種に就きたいと思っても、危険が伴う、あるいは実質的に無理なこととなってしまうのではないでしょうか。

一方で、汗をあまりかかないで済みそうな職種の一般事務は、有効求人倍率が0.4倍を下回るという狭き門となっているのです。

また、基礎代謝が落ちる低体温症では、細胞の新陳代謝も活発ではなくなり、免疫力も低下します。風邪などの感染症にかかりやすく、そして治りづらくなってしまいます。花粉症などのアレルギー症状も出やすくなるといわれています。

更に、全体的に不調、疲れやすい、元気がないといった状態が恒常的になりがちで、「集中力がない」「キレやすい」といった問題行動も低体温症によって引き起こされ、学習や生活に大きな影響を与えてしまうといったことも指摘されているのです。

お年寄り

お年寄りの多くは、人工的な冷気を好みません。このことが熱中症にかかるお年寄りを増やす大きな要因となっています。

冷房がいやだという方々に、冷房を強制するような住まいづくりを推進することが、望ましいのでしょうか。

今は若くとも、誰しも歳を重ね、いずれはお年寄りとなるのです。そのときに、冷房を好まなくなる可能性が高いのです。

にもかかわらず、冷房をしない場合はむしろ暑くなる住まいが、お年寄りに優しいといえるのでしょうか。

ペット

犬や猫などは、肉球などの限られた部分でしか汗をかくことが出来ず、人より熱中症になりやすいという現実があります。

そして、最近は住居内でペットと同居する方が増えています。

その結果、仕事や学校等で日中留守になるお宅は、ペットを守るために冷房を掛けっ放しにするという状況にもなってしまいます。

もちろん、大切な家族であるペットを守るという点では、重要な処置です。

しかし、環境や省エネといった観点からすると、いかがでしょうか。

ペットにも環境にも優しい住まいが実現したら理想的ですね。

便秘、他

冷房病の代表的な症状のひとつが便秘です。

日本トイレ研究所が2016年に実施した「小学生の排便と生活習慣に関する調査」によりますと、栃木県の小学生は25%、4人に1人が便秘であるという結果になっています。

冷房病では、便秘や下痢などの消化管障害以外にも、自律神経の乱れによるさまざまな症状が現れます。

冷え性、むくみ、疲労感、倦怠感、肩こり、頭痛、神経痛、腰痛、腹痛、食欲不振、頻尿、不眠、鼻炎、生理不順なども冷房病の症状です。


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