今後望まれる家づくりの方向性
冬と夏の両立
高齢化社会の現在、冬のリスクであるヒートショック(暖かい場所から寒い場所に移動することで起きる心筋梗塞や脳卒中など)をいかに防ぐかということも重要課題です。
しかし、そのために夏のリスクを犠牲にして良いということにはならないでしょう。
これまでに述べてきた環境や温暖化、そして子供からお年寄りまでの健康や冷房の弊害に配慮するならば、冬は省エネで暖かく過ごせ、夏は冷房なしでも過ごしやすい建物づくりを、しかも手軽に実現出来ることが求められるのではないでしょうか。
そのためには、熱はどのようにして伝わるのかという熱移動に関することを学び、理解する必要があるでしょう。熱がどのようにして移動するのかということを知らずして、冷房頼みにしない暑さ対策を実現することは、不可能といってもいいからです。
なぜ屋根の直下階が暑くなる
更に、夏期は太陽高度が高くなります。宇都宮で夏至に太陽が真南に来たときの高度は、78°です。南面を向いた屋根に対して、ほとんど直角に差し込んでくるということになるでしょう。それだけ屋根面が大量に太陽からくる赤外線の影響を受けるということなのです。
ちなみに、冬至の日における太陽の南中高度は32°、実にその差は46°にも及びます。しかも、宇都宮の冬至前後と夏至前後では、日照時間に約5時間の差が生じます。
これらのことを理解すれば、暑さ対策において特に重要なのが屋根面であることがお分かり頂けるでしょう。そしてこのことは、どんな建物でも最上階(屋根の直下階)が、総二階建てであれば二階のほうが、暑くなることからも理解いただけるのではないでしょうか。
●熱移動の三要素(三原則)
熱は「輻射」「対流」「伝導」という3つの要素で移動します。
対流による熱移動は、空気が動くことによって起きます。例えば、エアコンやドライヤーがそうです。
伝導による熱移動は、物質と物質が直接触れることで起きます。代表的なのがアイロンです。
そして、輻射熱による熱移動の代表的なものが、太陽から降り注ぐ赤外線です。しかし、赤外線そのものが熱いのではなく、赤外線を浴びた物質、例えば地面、建物、道路、樹木、人体などの分子が電磁波の一種である赤外線によって高速に振動させられ、熱を帯びるのであり、これを応用したものが電子レンジです。
●上からくる熱移動の内訳
先程、夏期(太陽の南中高度が大きくなる季節)には、屋根面が大量の赤外線、つまりは輻射熱(放射熱とも呼ばれます)の影響を受けるということを、学んで頂きました。
ここで注目すべき点は、上から下に熱が移動する場合の93%、つまり、ほとんどは輻射熱であるということです。
ですので、輻射熱への対処が出来ない限り、暑さ対策は成り立たないのです。

●輻射熱と断熱材
断熱材は「熱伝播遅効型熱吸収素材」です。つまり、熱を吸収することで熱が伝わる時間を稼ぐという材料です。それが断熱材と呼ばれることで、あたかも熱を断つことができるようなイメージをお持ちの方も、少なくないかもしれません。しかし、決して熱を遮断する材料ではないのです。
そして、断熱材は輻射熱のなんと90%を吸収し、やがて放熱します。
したがいまして、断熱材を厚くする、断熱性能を高めるということは、蓄熱出来る熱量を増やし、熱の伝わる時間を遅らせるということに過ぎないのです。
そして、蓄熱する熱量が多いほど、冷めにくくなります。だから、暑い日には陽が沈んでから外のほうが涼しいという具合になるのです。そこで、寝しなに冷房、場合によっては一晩中冷房となるわけです。
どこのハウスメーカーさんや工務店さんも、天井面(外張りであれば屋根面)には、壁面の2倍程度の断熱を施しているはずです。
にもかかわらず、陽が沈んでからも2階(屋根の直下階)のほうが暑いということが、このことを物語っています。
本当に高気密高断熱が涼しいのであれば(冷房なしで)、赤道直下で高気密高断熱の住まいを造れば、一年中快適に過ごせることとなります。しかし、実際はどうなるでしょう。
衣類は脱ぐことも出来ますが、断熱材は出来ません。つまり、単純に高断熱化を図るということは、真夏にダウンジャケットを着込んでいるのと同じことといえるでしょう。
実際に、平成25年に改正された最新の省エネルギー基準では、8地域の外皮平均熱還流率の基準値では、壁・床が撤廃されました。言い換えれば、常暑地において天井を除き断熱は不要ということです。なぜならば、断熱材は暑さに対して逆効果にも成り得るからです。
そして、温暖化に加えて、住まいの高気密高断熱化が冷房需要の増大に拍車を掛けるという状況なのです。
輻射熱への対処方法
ではどうすれば良いのでしょうか。それは、断熱材に加えて高性能の遮熱材を併用することであす。遮熱材にも色々なものがありますが、中途半端な遮熱性能ではなく、高性能の遮熱が必要です。高性能の遮熱材であれば、輻射熱のほとんど(最も性能の高いもので輻射熱の99%)を撥ね返すことが可能なのです。
これを屋根面に施工すれば、屋根裏の温度上昇を抑制出来ます。
壁面まで施工すればより効果を発揮できますが、暑さ対策に重きを置くのであれば、屋根面だけでも十分です。
そこにしっかりとした断熱、窓に断熱サッシとエコガラスの採用などを組み合せれば、冬と夏の両立が実現できます。
この方法であれば、施工も簡単ですし、コストアップも抑えられます。高嶺の花では意味がありません。手軽なコストでどなたでも実現出来るとも考えています。